取得時効の意義と適応範囲


人々が、安心して生活していくことができるように、さまざまな権利関係・義務関係が法律によって定められています。主に、私人間のやり取りについて定めているのは民法という法律で、何か問題が発生した場合は、原則として民法の規定に従って解決することになります。

たとえば、さまざまな動産の所有権に関して、争いが生じることがあります。物というのは、同時に複数の人が所有することができません。権利を持つ人を、誰か1人に限定する必要があるのです。問題になりやすい状況としては、自分自身の物ではなく、他人が所有している物を、一定期間占有し続けたという状況があります。

本来、所有している人に権利があるわけですが、他の人の物であっても、民法で定められている期間、占有し続けていることで、権利を取得することが認められています。他人の物なのに権利を取得することができるのは、法律上の権利関係を早期に安定させることが、人々の生活を円滑にするために必要だからです。

他人の権利を取得するために必要な期間というのは、動産・不動産の場合と、一般債権の場合とでは異なっています。民法で定められている正確な期間について理解することが必要になります。

時効にはどんな効果があるの?


法律には、ある事実状態が一定期間継続した場合に、権利の取得・喪失という法律効果を認める制度があります。つまり、本来権利者であった人が権利を失ったり、権利者ではなかった人が権利を得たりする場合があるということです。
こういった場合には、遡及効というものが非常に重要な意味を持ちます。遡及効とは、法律や法律要件が、その成立以前に遡って効力をもつことをいいます。過去の行為に影響を及ぼすので、特に規定のある場合以外は原則として認められません。これを法律不遡及の原則といい、特に刑法では遡及させることで人権に影響を及ぼすことがあるのでこの原則が重要となります。日本国憲法第39条にも事後法の禁止として定められています。
また、起算日とは期間を計算しはじめる第一日のことで、この計算が遡及効においても大変重要になってきます。民法第140条にも条文があり、期間を定めた時には期間の初日は算入しないというもので、これを初日不算入の原則といいます。
たとえば、1月1日に1年間の期間の契約をしたとすると、その1月1日を算入しないで翌日の1月2日から期間を起算します。これは、初日を算入してしまうと、その日の契約を結ぶまでの時間も効力が及ぶことになり、契約を結ぶ前のことについても責任を負う必要が出てきてしまうからです。
このように初日がいつであるのかによって、遡及効が効力を持つ期間が変わってくるのです。

時効と似ている制度


消滅時効とは権利の不行使状態が一定期間継続するとその権利が消滅することですこの制度の趣旨は長い間権利の上に眠っていた者は法の保護に値しないとする考えからきていました。例えば友人や知り合いにある人がお金を貸したとします。この場合ある人は債権者で友人や知り合いは債務者であり金銭の返済義務があります。しかし債権者のある人が返済期日を過ぎたにも拘わらず10年間返済も受けず請求もしない場合はこの友人や知り合いは消滅時効の反射的利益として金銭の返済義務がなくなります。ただしその利益を受けるかどうかは当事者である友人や知り合いにあります。当事者がそれによって権利の取得または消滅を主張しなければなりません。この援用ができるのはこれによって直接利益を受ける者に限られます。また消滅時効には中断というものがあります。消滅時効期間進行中に相手から請求や差し押さえを受けたり相手に権利があることを認めたりするとこれは中断しこれまで経過した時間は無意味のものとなりまた初めからカウントされることとなります。
これに似た制度に除斥期間がありますがこれは法律上の権利行使期間のことをいい援用を用しない点と中断がない点が違います。

消滅時効の意義と適応範囲


債権などの一部の財産権は一定期間権利を行使がされなかった場合、その法的効力を失うという規定があります。
定められた期間は権利によって異なりますが、債権については10年、それ以外の財産権については20年の期間が経過すると効力を失うと定められています。
誰かにお金を貸した場合を例とすると、相手に対して返済を求めるなどのアクションを起こさずに10年間が経過すると、その後は返済を求めることができなくなるということです。
なぜそのような規定があるのかというと、長期間続いた状態を維持することが法律関係の安定のために必要であることや、権利を行使せずに放置している者は法律で保護する必要性がないこと、あまりに古い過去の事実について立証することは難しいことなどが理由として挙げられます。
ただしこの権利の消滅についての規定が適用される範囲は、所有権や占有権以外の財産権に限られます。
また、民法や商法などで規定される一部の権利については、権利関係を迅速に確定する必要があることから、10年よりも短い期間で権利を失うものもあります。
最も短期間のものとしては約束手形や小切手などが挙げられ、これらについては6ヶ月で権利が消滅すると定められています。

時効の停止とはどういうこと?


時効の停止とは実施期間中に中断、つまり、効力を停止して最初に戻るという行為が難しい事由が発生した場合に、その効力の完成を防ぐために一旦期間完成を猶予することを差します。停止中の期間は参入されません。そして、停止は中断とは違い、その事由が解決すれば再び再開となります。停止を行うためにはいくつかの事由とそれに対する期間が決められています。有名なものとしては刑法上での停止があり、犯人が国外に逃亡している間は、その期間中は進行が停止されるというものです。また、民法上では、期間の満了6ヶ月以内に未成年者または成年被後見人に法定代理人がいないときや、未成年者や成年被後見人がその財産を管理する法定財産管理人に対して権利を有するときには、当該人が行為能力者となる、或いは、法定代理人が就職したときから6ヶ月を経過するまでの間を停止とする。夫婦の一方が他方に対して有する権利は婚姻の解消から6ヶ月を経過するまでの間停止とする。相続は、相続人が確定、または管理人が選定、または破産手続き開始決定があったときから6ヶ月を経過するまでの間停止とする。天変地異など止むを得ない理由による場合は、その障害が消滅してから2週間を経過するまでの間停止する、とされています。

 

 

 

 

時効の中断ってどういうこと?


時効期間の起点日と言うのは借金であれば契約時若しくは返済の開始日、犯罪であれば罪を犯した日になります。そこから一定の期間が経つと免責、免罪が成立します。ただ借金、債務の場合は債権者に対して意思表示をする必要が有ります。殆どの場合は債権者に意思表示をした時点で、免責は成立します。
しかし対応策として期間の進行を中断する手続きを行う債権者もいて、一定の期間が経っても成立しない場合が有ります。中断事由として挙げられるのは、債務者が外国に在住していた事が判明した場合です。この場合は日本国内在住期間ではないので、債務期間としてカウントされません。
次に中断事由として挙げられるのは、債務期間中に債務者が債権者に対し返済の意思を示した場合若しくは一部でも返済した場合です。この場合は契約時からその行為を行った時までの期間は無効になりますので、起点日は最後に返済を行った日からの計算になります。
その他にも期間を中断事由と債権者が判断し、期間を中断する旨を債務者に通告して債務者がその通告を受理した場合は債務期間を中断する事が出来ます。よく外国在住時は勘違いされがちですが、返済さえきちんとしてればそういう事になる事は有りません。”

 

時効の利益を受けないという意思表示


借金には一定の期間を過ぎて援用権を行使するとそれまでの債務を免責される制度が有りますが、全てそれを認めてしまうとそれを利用した悪質な債務者も出て来る可能性も有る為一部例外も認めています。
債権者が債務者に対し起算日から時効完成前の間に期間の進行を止める意思表示をして、それが裁判所に認められると期間の進行は止まり、債務者は債務に対し履行しなくてはいけません。しかしこの手続きは時効完成後に行っても効果は有りませんので、注意は必要です。金融機関として金銭を貸している会社は、定期的に債務者に通知を行っていますので債務者の居所が分かる時点では問題は有りませんが、個人で貸している場合も有効ですので定期的に覚書を書かせるとか、貸す時点で援用権の無効等を公正証書に残し債務不履行の場合の措置方法まで残しておけば裁判をする手間を省けます。公正証書は裁判での判決と同じ効力を持っていますので、不履行であった場合は公正証書の書いていれば強制差押も可能です。
免責は基本的には時効完成後に債権者に対し、援用を行使しなければ成立しませんのでそれまでに期間に停止若しくは援用の無効の意思表示を債務者及び裁判所に申請し、認定されれば債務者は完済するまで返済の義務を果たさなければなりません。

時効の援用とはどういうこと?


借金にも一定期間返済が出来ず、時期が経つと裁判所に申し入れをして債務者が債権者に「お金はもう返しません」と言う意思表示をする事で免責を無くす事が出来る援用処置が有ります。勿論債権者の中には援用の効果の無い様に上手く処置を取っている債権者もいますが、基本的には援用処置をする事で債務者の返済義務は無くなります。しかし条件が有りまして援用処置は債権者が知る様にきちんと書面で行わなければいけません。大体が行われる場所は、裁判所か法律事務所で書類が作成されて債権者の元に送られるのが多いのですが、注意しなければならないのが全部の債権者が従うとは限らないと言う事です。違法な債権者であれば住んでいる場所まで回収に来る可能性も有ります。その時は警察に通報すれば、警察が処理してくれますので勇気を出して通報してください。しかし援用の処置を債権者に怯えて、行わないといつまで経っても債権者に追い回されるだけですので、時期が経ったら勇気を出して援用処置を行って下さい。しかし注意点が有りまして、期間成立までに1度でも返済してたり、返済の意思を表示している物に関してはそこが期間の開始日になりますので、契約日からの計算になりませんので注意して下さい。

なぜ時効制度が存在するの?


所有者らしい事実状態が一定の期間継続するとその者に所有権があることになります。また権利の不行使状態が一定期間継続するとその権利は消滅します。またそうした事実状態に即応し、その開始時にさかのぼって権利の取得や消滅を認める制度を作ることで権利関係を安定させることができます。この制度の趣旨はここにあるのです。例えばある時に古い証拠をもって自分こそがその物に対する真の所有者であると名乗りでる者が出た時にそれに対する証拠や証人には長い間経過しますと散逸している場合があり証明困難になります。そのような証明困難な場合に不利益を得ることがないようにする必要があります。さらに権利を行使できるのに行使しなかった者は法律の保護に値しないという考え方もあります。この制度はこのような考えを基に作られているのです。ただしこのような制度を利用して権利の取得や消滅を認められるのには一定の事実状態が中断、停止といった障害事由なしに一定期間継続する必要があります。さらにこの要件が満たされたとしてもこの制度の利益を受けるかどうかは当事者の自由な選択にゆだねられています。その援用がなければ裁判者はこの制による裁判をすることはできないのです。